『新世黙示録』は、ふつうのTRPGではない。人類の歴史をスピリチュアルに理解するためのガイドブックでもあるのだ。
歴史を物質的な視点ではなく、霊的な側面から捉えるという試みは、各民族の神話によって行われてきた。しかし、ヘロドトスや司馬遷によって残された正史といわれるようなものでさえ、主観的な歴史物語にしか過ぎない。いわんや神話は為政者が民を縛りまとめるための呪、つまりプロパガンダ的要素が非常に強い。
我々は神話時代に一体何が世界に起こったのか、まるで一昨日見た夢でも思い出すかのようにしてしか、知ることができないのだ。
しかし、そうした神話の中にも消せない痕跡、はるかな過去から口承で伝えられた真実の断片が隠されている。また神話の中には、心理学者ユングが指摘したように、人類共通の潜在意識に関しての智慧も隠されている。
『新世黙示録』はそうした真実と、各民族が主張する正史と、そこから導かれる超古代史と言われるパラノイアックな幻想とを一緒に煮込んだ濃いスープである。そして同時に、近未来に訪れると言われる世界終末に関する予言書であるかも知れない(自分で書いていて、かなりアブナイなとは思うのだが、真実そういった内容である)。
『新世黙示録』は世界終末と最終戦争をテーマにしている。神々の戦いによって、地上の世界で生じる混乱と、それに巻き込まれる人々の葛藤を描くものなのである。
ここでは黙示録が現実のものとなり、世界が最後の審判によって裁かれ、破壊される過程と、その前後の時代が表現される。こうして、壮大なスケールで、神々、悪魔、天使たちの抗争が、現代と近未来とを舞台にして描かれるのである。
ノストラダムスによる1999年の大予言が外れたので、もう済んだことと思っている方が多いかもしれないが、実は世界終末の予言は世紀末ではなく、21世紀初頭に集中しているのだ。
『ヨハネの黙示録』に代表されるキリスト教系のさまざまな終末預言や、ネイティヴ・アメリカンたちの予言、近年の予言者たちの言葉、マヤ暦における第五の太陽の死などが、まさに今世紀初頭にシンクロする。
TRPGのゲームとしては、身近で起きる怪奇現象から、世界の行く末を決める神々の戦いまでを表現するため、ゲームシステムでは、キャラクターが飛躍的に成長する「覚醒」に重きを置いている。
プレイヤーのキャラクターは、最初は超常現象に翻弄されるふつうの人間だが、やがて覚醒して強力な力を得ていく。そして神の転生者、もしくは新人類の超能力者として、自分の信じる道を進み、これを妨げる者と対決してゆくのだ。
プレイヤーは、キャラクターの成長、覚醒を体験してゆく一方で、神々の戦いの真相をゲームマスターと共に解釈し、その結末を決定していくこととなる。
キャラクターたちの活躍によっては、世界は「大災厄」を免れ、神の裁きの訪れない未来が作られることになるだろう。
2002-03-07 鈴木一也